HOME知見 / インサイドセールス

インサイドセールスの立ち上げ手順|最初の90日で何をやるか

2026年7月18日執筆:島津 裕太(株式会社HC 代表取締役)

インサイドセールスの立ち上げで最も多い失敗は、いきなり架電を始めてしまうことです。私がIS責任者として立ち上げから運用まで担当し、商談化率を15%台から月次30%超(最高35%超)へ、アポイント数を月約180件から約270件規模へ引き上げたときの手順を、90日を3つのフェーズに分けて公開します。

なぜ「まず架電」が失敗するのか

インサイドセールスを立ち上げると決まると、多くの組織はリストを買って翌週から架電を始めます。気持ちは分かります。動いている感があるからです。

しかしこれをやると、3ヶ月後に「効果があったのか分からない」という結論だけが残ります。誰に・何を言って・どう反応されたかが記録されていないため、良かった打ち手も悪かった打ち手も再現できないからです。担当者の頑張りが組織に何も蓄積しません。

原則

インサイドセールスは「電話をかける部隊」ではなく、「商談が生まれる確率を、記録と改善で上げていく仕組み」です。仕組みである以上、最初に作るべきは架電リストではなく記録と判断の型です。

フェーズ1(1〜30日):定義と記録の型を作る

最初の1ヶ月は、成果を求めずに土台を作ります。ここを飛ばすと後の2ヶ月が丸ごと無駄になります。

1. 用語の定義を1つに固定する

「リード」「アポ」「商談」が人によって違う意味で使われていないか確認します。特に「商談」の定義は必ず揃えてください。名刺交換を商談と呼ぶ人と、提案機会を商談と呼ぶ人が同じ会議にいると、数字の議論が成立しません。

用語定義の例(自社で1つに決める)
リード接触可能な連絡先が判明している状態
アポ日時が確定した面談の約束
商談課題をヒアリングし、提案の余地があると確認できた面談
提案金額を含む具体的な提案を提示した状態

2. 商談ログの型を決める

1商談=1行で記録します。最初は項目を増やしすぎないことが重要です。入力が面倒になると記録が止まり、記録が止まれば改善もできません。獲得日・経路・ステージ・ステータス・失注理由・次アクションと期限があれば十分に始められます。

設計のキモ

ステージは「現在の状態」ではなく「最高到達段階」で記録します。失注してもどこまで進んだかが残るため、どの段階で失注が多いかが見えます。勝敗はステータス列で別に持ちます。

3. ターゲットを絞る

全業種に架電したくなりますが、最初の30日は1〜2セグメントに絞ります。母数が分散すると、反応の良し悪しがセグメントによるものか、トークによるものか判別できなくなります。

フェーズ2(31〜60日):回して、落ちている段階を特定する

2ヶ月目でようやく本格的にアプローチを始めます。ここでの目的はアポ数を最大化することではなく、どの段階で落ちているかを特定することです。

軸① コール活動の効率(延べ)

通電数 ÷ リード数通電率
アポ数 ÷ 通電数アポ率

軸② リストの当たり率(ユニーク・最大100%)

アポに至ったリード数 ÷ リード数商談化率
提案 ÷ 商談提案転換率

この4つを並べると、必ずどこか1つが突出して低くなっています。そこが最初のボトルネックです。よくあるパターンは次のとおりです。

記録が「意味のある情報」になる瞬間

30日分の記録が溜まると、それまで感覚で議論していたことが数字で見えるようになります。「午前の架電は繋がらない」「紹介経由は商談化率が突出して高い」といった事実が、意見ではなくデータとして出てきます。ここから改善が加速します。

フェーズ3(61〜90日):週次の型を固定し、自走させる

3ヶ月目にやるのは、改善を個人の努力ではなくルーティンに変えることです。

週15分のレビューを固定する

  1. 商談化率は先週比で上がったか(単月の絶対値ではなくトレンドを見る)
  2. 4つの歩留まりのうち、どこが一番落ちているか(=今週直す1箇所を決める)
  3. 停滞している商談に、今日中に次アクションを1つ入れる
  4. 経路別の歩留まりを見て、商談になりやすい経路に時間を寄せる

見る指標はこの4つだけに絞ります。指標を増やすほど、打ち手は絞れなくなります。

停滞商談の可視化を入れる

立ち上げ期に最も効いたのがこれです。BtoB営業の失注の多くは「競合に負けた」のではなく「放置されて消えた」ものです。ステージ更新から7日以上動いていない進行中の商談に自動でフラグを立て、週次で必ず次アクションを入れる。これだけで消えていた商談がパイプラインに戻ってきます。

立ち上げでよくある失敗

やりがちなことなぜ失敗するか
いきなり架電を始める記録の型がないため、良かった打ち手も再現できない
初月からアポ数を目標にする質の低いアポが量産され、商談化率が下がる
ターゲットを 広く取る反応の差がセグメント由来かトーク由来か判別できない
KPIを10個設定する直す場所が絞れず、施策の検証もできない
月次でしか振り返らない1ヶ月経つと停滞商談は手遅れ。週次でないと拾えない

まとめ

Self-serve Kit

立ち上げの型を、そのまま使える形にしました

本記事で書いた商談ログの設計、段階別ダッシュボード、各段階の商談文面を実装済みの「商談化率2倍キット」にまとめています。買い切り¥9,800・ミーティング不要で、今日から回せます。

キットの詳細を見る →

For organizations

組織単位で立て直す必要があるなら

記事の内容は個人でも実行できますが、営業組織そのものを設計し直す段階なら、実装型顧問として伴走しています。 担当した事業拠点では月商を約9倍、営業利益率を約5%から約11%まで改善しました。初回のオンライン相談は無料です。

顧問の詳細を見る →

よくある質問

インサイドセールスの立ち上げにはどれくらい期間がかかりますか?

記録の型づくりに約30日、ボトルネックの特定に約30日、週次レビューの定着に約30日で、合計90日程度が一つの目安です。ただし1ヶ月目から成果(アポ数)を求めると土台が崩れるため、最初の30日は仕組みづくりに充てることを推奨します。

インサイドセールスは何人から始めるべきですか?

人数より先に記録の型を決めることが重要です。1名でも、商談ログと週次レビューの型があれば改善は回ります。逆に人数を増やしても記録の型がなければ、属人的な成果が並ぶだけで組織に蓄積しません。

立ち上げ初期に最初に設定すべきKPIは何ですか?

アポ数ではなく、段階別の歩留まりです。ただしコール活動の効率(通電率・アポ率/延べベース)リストの当たり率(商談化率/ユニーク・最大100%)は別軸なので、混ぜずに分けて見ます。アポ数は母数であり、歩留まりが変わらなければ増やしても商談化率は改善しません。まず落ちている段階を特定することを優先します。

インサイドセールスと営業代行の違いは何ですか?

営業代行は成果(アポ獲得)を外部に委託する形態で、ノウハウは基本的に社内に残りません。インサイドセールスを内製化する目的は、記録と改善のサイクルを自社に蓄積し、担当者が変わっても再現できる状態を作ることにあります。

関連記事

商談化率とは?計算式と、15%台から30%超に引き上げた実装手順 → 営業KPIの設計|追う指標を減らすほど数字が動く理由 → 失注理由の分類設計|「タイミング」で片付けないための型 →

島津 裕太(株式会社HC 代表取締役)

大手通信キャリアで光回線の個人営業実績 全国1位。人材紹介会社の東日本統括責任者として担当拠点の月商を約9倍へV字回復。BPO事業のインサイドセールス責任者として商談化率を15%台から月次30%超へ引き上げる。現在は株式会社HCとして、インサイドセールスの立ち上げ・営業組織づくりを「実装まで」支援している。