低迷した営業組織を立て直すとき、着手する順序を間違えると何をやっても効きません。私が人材紹介会社の東日本統括責任者として、担当拠点の月商を約260万円から2,400万円超(約9倍)へ、営業利益率を約5%から約11%へ改善したときに踏んだ順序を書きます。
最初にやってはいけないこと
立て直しを任された人がまずやりがちなのが、気合いを入れ直すことと人を入れ替えることです。どちらも順序としては後ろです。
気合いで動く数字は一時的にしか動きません。翌月には戻ります。人の入れ替えは、そもそも「今いる人が成果を出せない構造」を放置したまま人だけ替えても同じ結果になります。新しい人も同じ構造の中で働くからです。
立て直しは「人を変える」より先に「構造を見る」。同じ人が同じやり方で成果を出せていないなら、原因は多くの場合その人ではなく、数字が見えていないことにあります。
順序1:数字が見えるようにする
最初にやるのは施策ではなく可視化です。低迷している組織はほぼ例外なく、次のどれかの状態にあります。
- 何件の商談が動いているのか、誰も正確に答えられない
- 先月の失注が何件で、理由が何だったか集計されていない
- 個人の売上は見えるが、どの段階で落ちているかは見えていない
この状態では、どんな施策を打っても効果を検証できません。まず1商談=1行で記録し、段階別の歩留まりを出します。ここに1〜2週間かけても構いません。急いで施策を打つより、はるかに費用対効果が高い投資です。
順序2:落ちている段階を1つ特定する
記録が溜まると、それまで「気合いが足りない」で片付けられていた問題が、具体的な場所に特定できます。
どこで落ちているかで、打ち手はまったく違う
重要なのは、この4つで打ち手がまったく違うことです。「アポの質」が問題なのに全員でロープレをやっても数字は動きません。順序1を飛ばすと、この特定ができないため施策が総当たりになります。
順序3:停滞商談を掘り起こす(即効性が最も高い)
立て直しの初期で最も早く数字が動いたのがこれです。
低迷している組織には、放置されたまま消えかけている商談が大量に眠っています。BtoB営業の失注の多くは競合に負けたのではなく、フォローが途切れて消えたものです。負けた商談は記憶に残りますが、消えた商談は誰の記憶にも残らないため、対策されないまま毎月同じ量が失われ続けます。
ステージ更新から7日以上動いていない進行中の商談をすべて洗い出し、その日のうちに全件へ次アクションを入れる。新規開拓より先にこれをやります。すでに接点のある相手なので、最も受注に近い母集団です。
新規リストを買う前に、まず手元の掘り起こしです。コストがゼロで、最も確度が高い。
順序4:勝ちパターンを型にして横展開する
記録が2〜3ヶ月分溜まると、成果を出している担当者と出していない担当者の差がどこにあるかが数字で見えてきます。
ここで重要なのは、成果を出している人の「やり方」を型として言語化することです。「あの人はセンスがある」で終わらせると、組織には何も残りません。事前ヒアリングで何を聞いているのか、初回商談をどう閉じているのか、具体的な行動レベルまで分解して、他のメンバーが再現できる形にします。
私が担当拠点で行った再建でも、最終的に効いたのは個人の頑張りではなく、この「型の横展開」でした。属人的な成果は、その人が抜けた瞬間に消えます。
順序5:利益率に手をつける
売上が戻ってきてから、初めて利益率に着手します。順序を逆にしてはいけません。売上が低迷している状態でコストを削ると、必要な投資まで削って再建が遠のきます。
私のケースでは、月商が回復軌道に乗ってから利益構造に手を入れ、営業利益率を約5%から約11%へ改善しました。売上の伸びに比べて利益率の改善は地味ですが、組織が継続できるかどうかはここで決まります。
立て直しでよくある失敗
| やりがちなこと | なぜ失敗するか |
|---|---|
| まず人を入れ替える | 成果が出ない構造を放置したままでは、新しい人も同じ結果になる |
| いきなり新規リストを買う | 手元の停滞商談のほうが確度が高く、コストもゼロ |
| 施策を同時に5つ打つ | 効果を検証できず、ノウハウが蓄積しない |
| 売上より先にコストを削る | 必要な投資まで削り、再建が遠のく |
| 成果を「センス」で説明する | 型にしないと横展開できず、その人が抜けたら消える |
まとめ
- 立て直しは「人を変える」より先に「構造を見る」
- 順序1:数字を可視化する(ここに1〜2週間かけてよい)
- 順序2:落ちている段階を1つ特定する。段階が違えば打ち手も違う
- 順序3:停滞商談の掘り起こし。コストゼロで最も即効性がある
- 順序4:勝ちパターンを型にして横展開する。センスで説明しない
- 順序5:売上が戻ってから利益率に着手する。逆順は再建を遅らせる
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営業組織の立て直しは何から着手すべきですか?
施策ではなく可視化からです。1商談=1行で記録し、段階別の歩留まりを出すことを最初に行います。数字が見えていない状態では、どの施策を打っても効果を検証できず、ノウハウが蓄積しません。
立て直しでまず人を入れ替えるべきでしょうか?
推奨しません。成果が出ない構造を放置したまま人だけ替えても、新しい人が同じ構造の中で働くため同じ結果になりやすいためです。まず数字を可視化し、どの段階で落ちているかを特定することを優先します。
最も早く数字が動く打ち手は何ですか?
停滞商談の掘り起こしです。ステージ更新から7日以上動いていない進行中の商談を洗い出し、全件に次アクションを入れます。すでに接点のある相手なので受注に最も近く、新規リスト購入と違ってコストもかかりません。
売上と利益率はどちらを先に改善すべきですか?
売上が先です。売上が低迷している状態でコストを削ると、必要な投資まで削ってしまい再建が遠のきます。月商が回復軌道に乗ってから利益構造に着手する順序を推奨します。