「営業が属人化している」という言葉は、しばしば特定の個人への非難として使われます。しかし実際に属人化を生んでいるのは、多くの場合記録と定義が無いことです。個人を責めても解消しません。何を記録し、何を定義すればよいかを書きます。
属人化は3つの層で起きる
ひとくちに属人化と言っても、層によって打ち手が違います。混ぜて考えると手が付きません。
| 層 | 属人化している中身 | 打ち手 |
|---|---|---|
| 数字 | 誰が何件やって、どうなったかが分からない | 記録と結果定義 |
| トーク | うまい人のやり方が共有されていない | ナレッジ化 |
| 判断基準 | 良し悪しの基準が人によって違う | 評価軸の明文化 |
この順に手を付けます。数字が無い状態でトークのナレッジ化をしても、何がうまいのかを判定できないからです。
層①:まず架電結果の「定義」を明文化する
記録を始めるとき、多くの現場が最初に躓くのがここです。結果の選択肢が曖昧だと、集計が意味を失います。
たとえば「不在」と「見送り」と「時期尚早」を同じ人が別の基準で入力していたら、その集計から何も読み取れません。
実際に整備したのは、次のような粒度の結果定義です。
- 接続したか、しなかったか(通電/NG)をまず二分する
- 接続した場合を細かく分ける — 資料送付/見込みA・B・C/アポ獲得 など
- 接続しなかった場合も分ける — 不在、留守電、番号違い など
「ガチャ切り」と「門前払い」を分けたことがあります。
どちらも断られていますが、切電されたフェーズが違います。名乗った瞬間に切られるのか、用件を伝えた後に断られるのかで、直す場所はトークの冒頭か本題かに分かれます。
結果分類の粒度は、そのまま打ち手の解像度になります。
定義はスプレッドシート上に一覧で置き、そのまま貼り付けられる状態にしておきます。メンバーが迷わないことが、記録の質を決めます。
層②:勝ちパターンをナレッジにする
数字が取れるようになったら、次はうまくいった理由の言語化です。
実際にやっていたのは、アポイントを獲得できたときのログを集め、獲得できた要因を分析してメンバーへ展開するという運用です。
ここで重要なのは、結果だけでなく過程を残すことです。「アポが取れた」だけでは再現できません。どんな相手に、どのタイミングで、何を言ったから取れたのかが残って初めてナレッジになります。
層③:判断基準を明文化する
最後が判断基準です。ここが揃っていないと、フィードバックが人によって矛盾します。
実際に導入したのは、ヒアリングの粒度をA〜Cの3段階で判定する運用です。
アポイントを取った後、そのヒアリング内容がどこまで踏み込めているかを3段階で判定し、商談が実施になったかキャンセルになったかと突き合わせて要因分析をしました。
キャンセルになった商談は、アポ獲得時のヒアリング情報が明らかに薄いという傾向がありました。
つまりキャンセルは当日発生する問題ではなく、アポを取った時点で既に兆候が出ているということです。
判断基準を明文化すると、こうした先行指標が見つかります。
仕組みに落とす — 集計の属人性をなくす
記録と定義が整っても、集計を人がやっている限り属人化は残ります。担当者が休んだ週は数字が出ない、という状態です。
ここはスプレッドシートとGoogle Apps Scriptで自動化しました。
- 日次・週次・月次のKPIを自動集計する
- 集計結果をSlackへ自動で流す
- 時間帯別・担当者別・リード別の歩留まりをダッシュボード化する
目的は工数削減だけではありません。経営・マネジメント・現場が同じ数字を見ている状態を作ることです。各自が手元で違う集計をしている限り、議論が噛み合いません。
注意:疲弊した組織に、新しい施策は入らない
最後に、実務で何度も直面した現実を書いておきます。
オペレーションのメンバーが少ない組織は、目の前の業務に追われて新しい施策に取り組む余裕がありません。この状態で標準化やナレッジ化を持ち込んでも、「やることが増えた」としか受け取られません。
つまり、属人化の解消には余白をつくることが前提になります。人を増やすか、いまの業務を削るか。どちらもせずに仕組み化だけ求めても進みません。これは根性の問題ではなく、単純なキャパシティの問題です。
まとめ
- 属人化は個人の問題ではなく、記録と定義が無いことの結果
- 数字 → トーク → 判断基準の順に手を付ける
- 結果定義の粒度が、そのまま打ち手の解像度になる
- 勝ちパターンは結果だけでなく過程を残さないと再現できない
- 判断基準を明文化すると先行指標が見つかる(ヒアリングの薄さ→キャンセル)
- 集計を自動化して、全員が同じ数字を見る状態にする
- 疲弊した組織には新施策は入らない。余白づくりが前提
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営業の属人化は何から解消すべきですか?
数字の記録と結果定義からです。トークのナレッジ化を先にやっても、数字が無ければ何がうまいやり方なのかを判定できません。まず架電結果や商談ステータスの定義を明文化し、誰が入力しても同じ基準になる状態を作ります。
結果の分類はどこまで細かくすべきですか?
打ち手が変わる単位まで分けます。たとえば断られた場合でも、名乗った直後に切られたのか、用件を伝えた後に断られたのかでは、直すべき箇所がトークの冒頭か本題かに分かれます。結果分類の粒度が、そのまま打ち手の解像度になります。
マニュアルを作っても読まれません。
読まれない原因の多くは、参照するタイミングが設計されていないことです。新メンバーの受け入れ時に必要な内容だけを抜粋した手順書を別に用意する、操作系は動画にするなど、使う場面に合わせて形を変える必要があります。
集計は自動化すべきですか?
はい。集計を人がやっている限り、担当者が不在の週は数字が出ないという属人化が残ります。スプレッドシートとGoogle Apps Scriptで日次・週次のKPIを自動集計し、Slackへ流す形にすると、経営・マネジメント・現場が同じ数字を見られるようになります。
標準化を進めようとすると現場が反発します。
オペレーションのメンバーが少なく、目の前の業務に追われている組織では、新しい施策は「やることが増えた」としか受け取られません。仕組み化の前に、人を増やすか業務を削って余白を作る必要があります。キャパシティの問題であり、意識の問題ではありません。