営業の案件管理をスプレッドシートで作ろうとして、まず手が止まるのが列の設計です。ここを間違えると、入力は続いても数字が読めない表ができあがります。実際に運用している列設計、自動計算すべき3列、週次で見る5つの指標を公開します。
SFAの前に、まずスプレッドシートで作る理由
SFAを入れても定着しない組織は珍しくありません。理由の多くは、そもそも自社の営業プロセスが定義されていないままツールを入れるからです。
スプレッドシートには「自分で設計しないと動かない」という制約があります。この制約が逆に効きます。どの段階を持つのか、何をもって次に進んだとするのかを決めないと、表が完成しないからです。この定義さえできていれば、あとからSFAに移しても機能します。順序が逆だと機能しません。
商談ログの列設計
1商談=1行で記録します。最低限これだけあれば、後述の指標はすべて算出できます。
| 列 | 項目 | 例・選択肢 |
|---|---|---|
| A | 商談ID | 連番 |
| B | 獲得日 | 2026-07-01 |
| C | リード獲得経路 | 紹介 / DM / 問合せ / 広告 / イベント |
| D | 企業名 | ○○商事 |
| E | 担当役職 | 担当 / 課長 / 部長 / 役員 / 代表 |
| F | ステージ(最高到達) | 01リード / 02商談化 / 03提案 / 04クロージング / 05受注 |
| G | ステージ更新日 | 2026-07-10 |
| H | ステータス | 進行中 / 受注 / 失注 |
| I | 想定金額 | 300,000 |
| J | 失注理由 | 予算 / 決裁 / タイミング / 競合 / 価値不明 / 音信不通 |
| K | 次アクション | 見積提出 |
| L | 次アクション期限 | 2026-07-15 |
必ず自動計算にする3列
手入力にしてはいけない列が3つあります。ここを人が更新する運用にすると、必ず止まります。
- ステージ番号
=IFERROR(VALUE(LEFT(F2,2)),"")… 集計用に段階を数値化する - 経過日数
=IF(G2="","",TODAY()-G2)… ステージが動かず滞留している日数 - 停滞フラグ
=IF(AND(N2<>"",N2>7,H2="進行中"),"要対応","")… 進行中なのに1週間動いていない商談
BtoB営業の失注の多くは、競合に負けたのではなく、放置されて消えたものです。
「負けた」商談は記憶に残りますが、「なんとなく連絡が途切れた」商談は記憶にも記録にも残りません。だからこそ、動いていないことを機械的に検出する列が要ります。ここが管理表の中で一番効きます。
設計のキモ:ステージは「最高到達段階」で記録する
ステージ列には現在の状態ではなく、そこまで到達した最高段階を入れます。勝敗は別列(ステータス)で持ちます。
理由は単純で、「現在の状態」で持つと失注した瞬間にどこまで進んでいたかが消えるからです。提案まで行って失注したのか、商談化した直後に消えたのかで、直すべき場所はまったく違います。最高到達段階で持てば、どの段階で失注が多いかが見えます。
週次ダッシュボードで見るのは5つだけ
指標を増やすほど、どこを直せばいいか分からなくなります。見るのはこれだけです。
| 指標 | 定義 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 商談化率 | 商談化に至ったリード ÷ リード総数 | リストの当たり率 |
| 提案転換率 | 提案到達 ÷ 商談化 | 初回商談の質 |
| 受注率 | 受注 ÷ 提案到達 | クロージングの強さ |
| 停滞件数 | 停滞フラグの数 | 放置による失注予備軍 |
| 経路別商談化率 | 経路ごとの商談化率 | どこに時間を寄せるか |
割り算はすべてIFERROR(…,0)で囲みます。分母がゼロの時にエラーが並ぶと、それだけで見なくなるからです。
注意:商談化率には「2つの軸」がある
ここが最も誤解されます。同じ「率」でも、架電日ベースで数えるか、リード流入日ベースで数えるかで意味がまったく違います。
上のダッシュボードはリード流入日ベース(1リード最大1)で数える設計です。この軸だと商談化率は最大100%になります。一方、コール活動の効率を見る軸では通電もアポも延べで積み上がるため、通電率が100%を超えることがあります。異常値ではありません。
この2軸を混ぜると、打ち手の宛先(架電メンバーなのか、マーケティングなのか)を間違えます。詳しくは 通電率とアポ率の違い|同じ「率」でも軸が2つある に書きました。
週15分の運用に落とす
- 商談化率は先週比で上がったか(トレンド)
- 5段階のどこが一番落ちているか(=今週直す1箇所に絞る)
- 停滞フラグの商談に、今日中に次アクションを1つ入れる
- 経路別で商談になりやすい経路に時間を寄せる
この4つ以外はやりません。管理表は作った後に見なくなるのが最大の失敗なので、運用は短くします。
まとめ
- 列設計を間違えると、入力が続いても数字が読めない表になる
- 自動計算は3列(ステージ番号/経過日数/停滞フラグ)
- ステージは最高到達段階で持ち、勝敗はステータス列で持つ
- 週次で見るのは5指標だけ。増やすと直す場所が絞れない
- 商談化率は2つの軸がある。混ぜると打ち手の宛先を間違える
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営業のパイプライン管理はスプレッドシートで十分ですか?
商談が複数回の接点を経て決まるBtoB営業であれば、まずスプレッドシートで十分です。むしろSFAを入れる前に、自社の営業段階と「何をもって次に進んだとするか」を定義する必要があります。定義ができていないままツールを入れても定着しません。
商談管理表に最低限必要な列は何ですか?
獲得日、リード獲得経路、企業名、担当役職、ステージ(最高到達)、ステージ更新日、ステータス、想定金額、失注理由、次アクションと期限です。これに加えて、ステージ番号・経過日数・停滞フラグの3列を自動計算にします。
停滞は何日で判定すべきですか?
運用しているのは7日(1週間)です。ステータスが進行中で、ステージ更新日から7日以上動いていない商談を機械的に抽出します。日数は商材の検討期間に応じて変えて構いませんが、重要なのは人の記憶ではなく数式で検出することです。
ステージを「現在の状態」ではなく「最高到達段階」にするのはなぜですか?
現在の状態で持つと、失注した瞬間にどこまで進んでいたかが記録から消えるためです。提案まで到達して失注したのか、商談化直後に消えたのかで、直すべき箇所はまったく違います。勝敗はステータス列で別に持ちます。
商談化率が100%を超えることはありますか?
リード流入日ベース(1リード最大1として数える軸)であれば最大100%です。一方、架電日ベースで延べ件数を数える軸では、同じリストに複数回架電するため通電率などが100%を超えることがあります。異常値ではなく、軸が違うだけです。