「通電率が100%を超えているのですが、計算が間違っていますか?」と聞かれることがあります。間違っていません。営業指標には性質の違う2つの軸があり、片方の軸では100%を超えるのが正常です。ここを混ぜたまま議論すると、改善の宛先を間違えます。
なぜ2つの軸が必要なのか
インサイドセールスの数字が悪いとき、原因は大きく2つに分かれます。
- コール活動の問題 — 架電の量、かける時間帯、トークの質。直すのは架電メンバー
- リードの質の問題 — そもそも対象がズレている、温度が低い。直すのはマーケティング
この2つは改善を依頼する相手が違います。ところが指標を1本で持っていると、数字が悪いときに「架電が足りない」で終わってしまい、リードの質の問題が放置されます。だから軸を分けます。
軸① 架電日ベース・延べ(コール活動の効率)
改善の宛先:架電メンバー
- 通電率 = 通電数 ÷ リード数(通電=つながった全件)
- アポ率 = アポ数 ÷ 通電数(=トークの質)
同じリストに何度も架電するため、通電数もアポ数も「延べ」で積み上がります。
結果として通電率は100%を超えることがあります。1件のリードに3回かけて3回つながれば、そのリードだけで通電3件です。これは異常値ではなく、この軸の定義上そうなります。
この軸は全体と個人別の2階層で持ちます。全体で施策を決め、個人別でコーチング対象を決めるためです。
軸② リード流入日ベース・ユニーク(リードの質)
改善の宛先:マーケティング
- 通電率 = 通電したリード数 ÷ リード数
- アポ率 = アポ化リード数 ÷ 通電したリード数
- 商談化率 = アポに至ったリード数(1リード最大1)÷ リード数 → 最大100%
1リードは何回架電しても最大1として数えます。だから100%を超えません。この軸はリストの当たり率を表します。架電者の腕に依存しないため、全体のみで持ちます。
広告の種別や流入経路を紐づけておけば、どの経路のリードが商談になりやすいかが分かり、マーケ施策の評価に使えます。
両軸に持つ指標:商談実施率とキャンセル率
商談実施率 = 商談実施数 ÷ アポ数。キャンセル率はその裏返しです。
キャンセルが増えたときは、要因を2つに切り分けます。
| 要因 | 中身 | 直す場所 |
|---|---|---|
| IS起因 | 日程の詰めが甘い/価値づけ不足/リマインド不足 | インサイドセールス |
| リード起因 | そもそも温度が低い/対象がズレている | マーケティング(リードを戻す) |
この切り分けをせずに「キャンセルが多いからリマインドを増やそう」とやると、リード起因の問題に対して延々とISの工数を投下することになります。
成約率をISの評価に使ってはいけない理由
成約率はフィールドセールスの力量に大きく依存します。したがって全体の成約率でISを評価することはできません。
ただし例外があります。IS個人別で成約率に差が出る場合、それはアポイントの質のシグナルです。ヒアリングの深さ、期待値の作り方、決裁者を押さえたかどうかが効いています。全体では使えないが、個人別では意味がある指標です。
集計の時間軸を間違えない
軸①は架電日ベース、軸②はリード流入日ベースで集計します。
リードは流入したその日に架電が完結するとは限らず、何日もかけて追われます。そのためリードの質を架電日で集計すると、複数日の架電結果が混ざって実態がぼやけます。「7月に流入したリードが、最終的にどうなったか」を見たいなら、流入日で束ねる必要があります。
管理表の作り方
構造はシンプルです。行=指標(数と率)/列=日付の日次表を、軸ごとに1枚ずつ持ちます。
- 軸①(架電日ベース)… 全体用と個人別用の2枚
- 軸②(リード流入日ベース)… 全体用の1枚
これを分けずに1枚で持とうとすると、必ずどちらかの定義が壊れます。
まとめ
- 営業指標には架電日ベース(延べ)とリード流入日ベース(ユニーク)の2軸がある
- 軸①は通電率が100%を超えることがある。異常ではなく定義上そうなる
- 軸②の商談化率は1リード最大1なので最大100%。リストの当たり率を表す
- 改善の宛先が違う(軸①=架電メンバー/軸②=マーケティング)
- キャンセルはIS起因かリード起因かを切り分ける
- 成約率は全体ではISの評価に使えないが、個人別ならアポの質のシグナル
なお、公開している「商談化率を15%台から月次30%超(最高35%超)へ改善した」という数値は、軸②(リード流入日ベース)の数字です。実際の管理表の作り方は 営業パイプライン管理をスプレッドシートで作る に書いています。
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本記事の軸①(架電日ベース・個人別含む)と軸②(リード流入日ベース)を分けて管理できるスプレッドシートを、「商談化率2倍キット」に同梱しています。週次ダッシュボード・商談ログ・文面テンプレ・AIプロンプト付き。買い切り¥9,800です。
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通電率が100%を超えるのはなぜですか?
架電日ベースで延べ件数を数える軸では、同じリードに複数回架電するため通電数が積み上がるからです。1件のリードに3回かけて3回つながれば通電3件と数えます。定義上そうなるもので、計算ミスではありません。リード単位(ユニーク)で数える軸では100%を超えません。
通電率とアポ率はどちらの軸で見るべきですか?
目的によります。架電メンバーのコール活動を改善したいなら架電日ベース(延べ)、リードの質やマーケ施策を評価したいならリード流入日ベース(ユニーク)です。両方を持ち、数字が悪いときにどちらの問題かを切り分けます。
商談化率の正しい計算式は何ですか?
リード流入日ベースであれば「アポに至ったリード数(1リード最大1)÷ リード数」です。1リードは何回架電しても最大1として数えるため、最大100%になります。これはリストの当たり率を表す指標です。
キャンセル率が高いときは何から手を付けるべきですか?
まずIS起因かリード起因かを切り分けます。日程の詰め・価値づけ・リマインド不足であればIS側、そもそも温度が低い・対象がズレているならリード側の問題で、マーケティングに戻す必要があります。切り分けずにリマインドだけ増やすと工数が無駄になります。
成約率でインサイドセールスを評価してよいですか?
全体の成約率での評価は適切ではありません。フィールドセールスの力量に大きく依存するためです。ただしIS個人別で成約率に差が出る場合は、ヒアリングの深さや決裁者を押さえたかなど、アポイントの質のシグナルとして意味があります。